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初冬の浅間山登山:外輪山から前掛山、異なる山容を持つ山旅を味わう周遊ルート

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11月後半、三連休最後の日曜日(11月25日)、浅間山登山へ行ってきました。外輪山の周遊から先頃立入規制が解除された前掛山を歩いてきた記録になります。

どこからも見える巨大プリンのような浅間山

浅間山は長野県と群馬県にまたがる成層火山。なだらかな円錐形の頂点をカットした、プリンのような(?)特徴的な山容を持つ独立峰で、八ヶ岳や北アルプス方面からも噴煙を上げるその姿は山好きにはお馴染みだと思います。

冬の北八ヶ岳・天狗岳から見た浅間山と外輪山

今年2018年の8月31日、2015年以来3年振りに噴火警戒レベルが「2」から「1」へと引き下げられ、山頂1km圏内にある「前掛山」の山頂(標高2524m)までの登山が可能となりました(登山道以外は立入禁止)。そのような経緯もありその後の紅葉時期にはかなりの登山客が訪れたようですが、そろそろ落ち着いている頃かもしれません……。

浅間山の活動状況
噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/306.html

浅間山は中央の噴火口を始め複数のカルデラで形成されていて、前掛山は山頂火口から近い内側の外輪山(一般的に浅間山の外輪山というと黒斑山などの外側のものを指します……)のひとつ。そこからなだらかな斜面を経て、山頂の西側にはゴツゴツとした外輪山の稜線が立ち上がっています。

今回はその外輪山を黒斑山〜蛇骨岳〜仙人岳〜鋸岳と縦走して、入山規制が解除された前掛山に登る時計回りの周遊ルートを歩きました。標高2000m近くから登り始めるコースですが、400m程度のアップダウンを3度ほど繰り返すので累積標高は単純に約3倍。全長15km弱のコースとなり、休憩などを含めると9〜10時間前後の活動時間となります。

全体的に歩きやすく一部を除いて危険な箇所もありませんでしたが、それなりのロングコースになるので体力や経験と相談の上、特に日の短いこの時期はスタート時間に気を付けましょう。今回は日の出前の6時頃にスタートしましたが、素晴らしい景色に足を止めることも多く、下山する頃にはあと少しで太陽が山陰に隠れる位まで傾いていました。

当日のコースタイムは以下のような感じで、休憩時間なども含めると9時間以上の行動時間でした。

車坂峠から表コースで登山スタート

登山のスタート地点に選んだのは「車坂峠」の無料駐車場。高峰高原ホテルと高峰高原ビジターセンターの周辺にそれぞれ駐車場がありますが、我々はホテル側の駐車場を見逃して通り過ぎ、ビジターセンター側の駐車場に停めました。登山道の入口に近いのはホテル側の駐車場になります(といっても2〜3分程度の違い)。


ビジターセンター及び、ホテル横に設置された公衆トイレは冬期閉鎖につき、高峰高原ホテルのトイレが開放されていました。ありがたいですね。

トイレを利用してホテル前の駐車場に出るとそこはちょっとした展望台になっていて、連なる山々の向こうに富士山も見えていました。今日はいい天気になりそう。

ホテルから車道をを挟んで登山口へ。ちょとした広場になっていて、入山届のポストも設置されています。浅間山は活火山への登山ですし(もちろんそれ以外でも必須ですけども)くれぐれも登山届けはお忘れなく。

まずは外輪山の黒斑山(2404m)に向けて2時間弱で登って行くコース。南側の視界が開けた尾根道の「表コース」と樹林帯の「中コース」があり、コースタイムは表コースの方が30分ほど余計にかかりますが、晴れていたら絶対に表コースがオススメです。

ウォーミングアップに丁度いい緩やかな登り。表コースは樹林帯の中ですが、南〜西側にかけて開けてる場所も多い明るい中を歩いて行けます。

この日も朝焼けに赤く染まったすぐ近くの高峰山を始め、彼方の富士山や八ヶ岳、北アルプスまでよく見えていました。


北アルプスをバックにして、手前に見えるのはこの日オープンした「アサマ2000パークスキー場」。見ての通り周囲に雪はありませんし、人工降雪期によるものでしょうかね。

表コースの登山道は一部かなり広くなった場所もあり、ガスると迷いやすいかもしれないので、天候不良の際は樹林帯の一本道である中コースを選んだ方がいいかもしれません。帰りに晴れていれば表コースで進行方向に夕刻の素晴らしい景色が広がっているはず。

登山道には若干雪が残った箇所も。軽アイゼンが必要な程ではありませんが、いつ積もってもおかしくないので、チェーンスパイク等の携行はお忘れなく。

気温は氷点下ですが稜線に出るまでは風もありませんし、動き始めてしまえばそこまで寒さは感じません。この日は朝からフリースとソフトシェルを着たままで、あとはベンチレーションの調節等でそこそこ快適に過ごすことができました。

月と北アルプスの稜線。11月も終わりだというのに雪がなかなか降らない2018年の冬ですが、前日までの寒波もあり北アルプスはそれなりに白くなっています。

進行方向に浅間山の姿が見えてきました。中心の少し高くなった部分が前掛山かな? 左手が黒斑山やトーミの頭に至る外輪山の一部です。

浅間山の噴火時には噴石などから身を守るシェルターの役割も果たす避難小屋。活火山を登ってることを突きつけられる瞬間です。


槍ヶ鞘〜トーミの頭で浅間山&外輪山とご対面

1時間半ほどで「槍ヶ鞘」に到着します。ここまでくると浅間山の全体像も見えますし、周囲の見晴らしも一気によくなります。


日の出から1時間、太陽もかなり顔を見せてくれました。

そこから少し登った場所が「トーミの頭」。おもしろい名前ですが絶好の展望スポットなので「遠見」がなまったものでしょうかね。頭の読みは“あたま”でなくの“かしら”です。


これから歩く外輪山の全体像も視界に入ってきました。ななだらかな浅間山とは真逆(?)な印象のゴツゴツと険しい稜線が続いています。これは格好いい!

一気に切れ落ちた足下の斜面にはジグザグの登山道(草すべり)が見えますが、ここを下って行くと湯ノ平分岐を経て直接前掛山に向かうことができます。標高差は300m程、この日のコースでは前掛山からの帰りにここを登ってくることになります(やれやれ)。

佐久の街の向こうには八ヶ岳もよく見えています。向こうも今日は最高のお天気なことでしょう。右手前は先ほど歩いてきた槍ヶ鞘からの登山道。


黒斑山から浅間山外輪山の稜線へ

草すべり〜湯ノ平方面への分岐ポイントはもちろん黒斑山方面へ進みます。反時計回りのコース取りをして、前掛山を先に登る(あるいは外輪山をパスしてピストンする)登山客もそれなりにいるようです。

登山道沿いに何本もケーブルが敷設されていて「山小屋もないのになんだろう……?」と思っていたら、緊急時の放送設備や浅間山の監視カメラが設置されていました。恐らく地震計なども設置されていて常に現地のデータを計測、監視しているのでしょう。


浅間山監視カメラ映像

「黒斑山」の山頂は樹林帯の中ですが、一応浅間山方面は開けています。展望の主役は槍ヶ鞘やトーミの頭の方でしょうか。この外輪山の稜線は4つのピークを縦走することになりますが、あまり目立つピークはなく全体のダイナミックさを楽しむ感じの稜線です。

既に紅葉は終わっている浅間山エリアですが熊笹などの緑はまだまだ鮮やか。確かに紅葉シーズンは素晴らしい光景を見られることでしょう(でもかなり混み合うらしい……)。

山頂付近の火口からもくもくと噴煙を上げる浅間山。右手前の緩やかな馬の背が前掛山、なるほど「前掛」の由来が分かる気がしますね。

外輪山の稜線は一部切り立った岩などもありますが、基本的には緩いアップダウンの歩きやすいコース。ただし、左右は切り立った崖になっている場所もあるので、滑落等には気を付けましょう。

外輪山の稜線に入って2つめのピーク「蛇骨岳」。稜線の西〜北もかなり開けてきました。色々な山が見えますがよく分かりません。北の方にある雪山は谷川連峰かな?


ここら辺りから風が強くなってきたので寒がりの妻はバラクラバを装着。このようなほぼ森林限界の稜線、気温は0℃前後で風もかなり吹き付けているので、くれぐれも防風対策はお忘れなく。今の季節ならレインウェアの上下でも大丈夫です。

この日は朝からゴアウインドストッパーのミトン&指出しの2WAYグローブを装着していました。ウインドストッパーは名前の通り風には強いので、前掛山の山頂以外はほこれのみでOKでした。氷点下数度ぐらいまでなら全然使えますね。


見てください、この気持ちのいい稜線。


砂のように見えますが雪です。ご覧の環境なので、結構砂埃(土埃)が巻き上げられるようです。油断すると口の中もジャリジャリしますし。

つづいて「仙人岳」。連続するピーク前後のアップダウンもそこまで大きくありません。

この辺りから稜線の左側が真北になり、北側の斜面の登山道は雪や凍結箇所もあるので、足を滑らせないように気を付けましょう。


何の動物の足跡かな?

外輪山の一番北、「鋸岳」が見えてきました。


鋸岳山頂の手前で下りの道が現れますが、一旦スルーして奥の「鋸岳」へと向かいます。謎のJバンドについては後ほど。

ということで「鋸岳」の山頂に到着。仙人岳側を見ているとこの鋸岳は結構スルーする人が多いようですが、浅間山も目の前に見られますし、周遊コースを歩いて来た外輪山の稜線を一望するのにも絶好のスポットだと思います。

外輪山の稜線を振り返るとすごい迫力!

下の方に見える一本道。前掛山に登るには一旦あそこまで下りて行く必要があります。


Jバンドから稜線を下りて賽の河原へ

ということで改めて「Jバンド」について、一体Jバンドとはなんぞや??? 当初地図を見た際はピークの名前だと思っていましたが、矢印の方向を見るとこの下降ポイントからの急峻な岩壁をそう呼んいるのかな?


バンド:岩壁を横断するように続く棚のこと。
岩棚(テラス)より狭く長いことが多い。
クライミング用語として使われることが多いが地名として使われている場合は、広義の意味で岩場を横断する登山道のこととして使われる
http://www.yamareco.com/modules/yamainfo/word.php?wid=675

こんな感じの斜面を下りて行きます。少々急ですが手も使えばそんな恐いところはないと思います。

振り返る……

急な崖は結構すぐに抜けてしまいます。

格好いい岩盤。

トーミの頭の向こう側にある外輪山の続き(?)の岩山も格好いいですよね。地図によると「牙山」とか「剣ヶ峯」でしょうか。

斜面とは逆の角度に斜めった地層!

同じ外輪山の稜線でも木々が多かった黒斑山〜蛇骨岳辺りとは全く異なるグレーや黒、赤味がかった剥き出しの岩肌。噴火時期の違いなどによるものでしょうか?

こちらが黒斑山〜蛇骨岳方面、ご覧の通りかなり緑が多い。面白いものです。

Jバンドからの斜面を下りると、外輪山の内側のカルデラに荒涼とした平地が広がっています。この辺りは「賽ノ河原」と呼ぶそうです。

「前掛山登山口」のスタート地点である「賽ノ河原分岐点」にやってきました。警戒レベルが1段上がると、ここから先は立入禁止となるようなので、今年の夏以前はここで引き返すか、湯ノ平分岐方面へと周回するしかなかったようです。


いざ前掛山へ

再び樹林帯を抜けてプリンの裾野へと入って行きます。

Jバンドの登山道が見えました。結構凄いところに道がありますね。

細かな砂と砂利、ゴロゴロした岩の登山道。なんとなく見覚えがあるというか、富士山の6〜7合目あたりの雰囲気に近いでしょうか?

振り返るとカルデラの向こうに外輪山の稜線、すごい…… ここは本当に日本だろうか?

徐々に斜度は上がりますが基本歩きやすい道です。

再び北アルプスがよく見える標高まで上がってきました。

内側の外輪山稜線(という表現でいいのかな?)に出ました。緑の規制ロープが貼られている向こうが浅間山の河口方面。白い噴煙もも随分と近くに見えるようになりました。

すぐに避難小屋(シェルター)が見えてくるので、そこからプリンの縁を歩くようにカルデラの際を登っていって前掛山の山頂までは30分弱。

富士山や御嶽山の山頂付近でも見たような、いかにも火山の山頂カルデラっぽい景色を見ながら歩いていきます。テキストでいくら「すごい!」と書いても伝わりませんが、この荒涼さが併せ持つ美しさにはやはり「すごい……」という言葉しか出てこないのです。

このお天気なので結構登ってる人も多いですね。外輪山経由でなく浅間山荘のある天狗温泉から直接登ってきている人も多いようです(こちら側はスタートの標高は低い代わりに、アップダウンはないコースです)。

あと少し……

到着ー! 浅間山(前掛山)山頂です。風が強いのでシェルターからバラクラバを付けました。昼間とはいえ気温はTG-5の記録で1℃(恐らくもう少し低い)、風も10m/s以上吹いているので雪がないだけで完全に冬山です。

上半身は長袖のアクティブスキン、ジオラインM.W.の上にフリース(ドラウトレイ)とソフトシェル、下半身はジオラインタイツM.W.の上にバーブパンツで山頂で30分位ならまあ大丈夫かなといったところ。とにかく風を遮るものが何もないのでソフトシェルやハードシェル(レインウェア)などの風装備は必須です。

手袋もシェルターから先はインナーグローブ(薄手のメリノウール)を入れてます。カメラの操作時にミトン部分をめくることもあるので、さすがに素手だと厳しいです。

外輪山を歩いてるときは「なだらかな浅間山本体よりダイナミックな外輪山の方が主役では?」なんて思っていましたが、この火山ならではの他では見ることができない光景も素晴らしい。外輪山と浅間山本体、一粒で二度美味しい山でした。


名残惜しくて何時までも写真を撮ってたい……(妻は寒いので先に下りはじめてる)。

シェルターまで戻ってきてここで軽く昼食。最近、山でのカップラーメンがちっともテンションが上がらないので、オニギリやパンで済ませてしまいます。

行動中の飲み物も今回の登山から魔法瓶(ケータイマグ)の紅茶に切り替えました。甘めに作っておいて、途中で山専ボトルの熱湯を追加すれば後半まで温かいお茶が飲めます。

下山、だけど下りるばかりじゃない…? 草滑りが待っている

さて、下りますか。外輪山の向こうに北アルプス。いい稜線といい稜線だ。

登りでも撮ってましたっけ? 景色が好きすぎて同じような写真撮り過ぎてる……

かなりいいスピードでこの斜面を駆け上がっていくトレイルランナー。めっちゃ薄着だしすごい……(下りてくるのもやはり速かった)。

再び賽の河原まで下りて樹林帯の中へ、あの稜線の向こうに登り返す必要がありますが……

その前にちょっとお手洗いに寄って行きましょう。周回コースを少し外れて火山館に立ち寄っていきます。といっても250m程度なのですぐです。

山小屋ではなく火山の資料展示とシェルターを兼ねた「火山館」。休憩場所として利用できる他、トイレを借りることもできます。外輪山の内側でトイレがあるのはここだけなので、周回コースを歩く場合はどのタイミングでここに立ち寄るか考えておくといいでしょう。


トイレを済ませ改めてカロリー補給をしたら後は駐車場を目指すだけですが、ここでなかなかの関門が待ち構えています。

朝方通ったトーミの頭まで300mを登り返す「草すべり」です。ちなみに火山館の標高は車坂峠と同じ(GPSログを見ると低い位)なので登った分だけ下ります(笑)

「草すべり」という名前の通り、一面熊笹が茂った急登をジグザグに登って行きます。

大変といえば大変ですが、正面にそびえる壁もかっこよければ振り返るとこの光景……

これらの風景を交互に、高度が上がる毎に少しずつ姿を変えていく絶景を眺めながらだと、1時間程度の草すべりはあっという間です……?


太陽が山の向こうに消えるギリギリ手前になんとか分岐ポイントに辿り着きました。


今度こそ下るだけの中コース

いやー、本当にナイスなプリンでした。これは季節を変えてまた来たい!というか雪が積もったらまたすぐにでも!?(積雪期のJバンドや草すべりはどうなるのだろう?)

この日2度目のトーミの頭。多少雲は出ていますが、最後まで富士山まで見渡せる素晴らしいお天気に恵まれた1日でした。

日中は日差しが強かったので一部霜が溶けてぬかるんでしまった場所も……。先に草すべりから前掛山を歩き、午後に外輪山の稜線から黒斑山に戻ってくるコース取りだと、もしかしたら足下がこんな感じかもしれません。

さて、このお天気なら朝と同じ表コースの方が暮れゆく景色を楽しめそうではありますが、初回ということで一応「中コース」も歩いておくことにします。

中コースはもうひたすら樹林帯の一本道です。

霜も全く溶けていませんし、日中もそこまで日が差さなかったのでしょう。登りで使ってもかなりペースは上がると思うので、登りと下りで分けるというよりは「晴れていたら表コース」「ガスっていたら中コース」みたいな使い分けがいいかもしれません。

まだ15時半ですがすっかり夕方の雰囲気……。足の速い人は別にして、外輪山周遊と前掛山とセットで登るならば、この時期は日の出前のスタートが必須かもしれませんね。

分岐から丁度1時間で車坂峠に帰着しました。

日も陰ってすっかり寒くなっていますし、どこか温泉に入って行きたいですね。

荷物を片付けたら車を一旦高峰高原ホテル側の駐車場に移動させます。というのも目の前がこれですから……

日没まではもう少し時間がありますが、この焼けっぷり。最後まで最高な1日でした。

下山後は夜景の見える温泉でひといきついてから小諸の街で美味しいハンバーグを食べることとなったのですが、それについては別の記事をご覧くださいませ。

この日のカメラですが、いつものE-M1 MarkIIを2台にM.7-14mmPROとM.12-40mmPROを選んでみました(大三元の広角&標準)。雷鳥も居なければ紅葉も終わってますし、望遠は必要ないかなと軽量なM.12-40mmPROを使ってみましたが、やはり素直にM.12-100PROにしておけば良かったかも?
広角はFisheye PROでも面白かった気がしますし、次回来る機会があればそちらの組み合わせも考えてみることにします。

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