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1年がかりで描かれる巨大絵地図:村松昭氏による山と川の散策絵図をアトリエ77で見てきた


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突然ですがこの大きな絵地図、何だか分かりますでしょうか?

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滝沢ダムのループ橋にサントリーのビール工場、私にとってもなじみ深い秩父エリアや多摩川流域が詳細に描かれたこの絵地図について今回は紹介します。

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以前から気になってた謎の絵地図屋さん?

東京の府中市に住んでいる私。以前、記事にしたこともある、ワンタン麺がとても美味しい府中本町のラーメン屋「いつみ屋」の隣に、以前から気になっている場所(店?)がありました。看板も何もないこの場所は一体……?

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シャッターが下りているのがこの日は定休日の「いつみ屋」

よく見るとディスプレイされているのは地図でしょうか? 大きな絵地図が何枚もディスプレイされた店内、よく見ると山っぽい地図も飾られています。地図専門店(最近はあまり見なくなりましたね)かなと思ったけど、それとも違うみたい。

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これまでなんとなく気後れして入るのを躊躇っていたのですが、昨日近くに用事があったので、思い切って飛び込んでみました。

村松昭さんと「アトリエ77」

ここは村松昭(むらまつあきら)さんという絵地図作家さんによる店舗を兼ねたアトリエ(名前は「アトリエ77」)でした。中に入って拝見していると、村松さんご本人が出てこられ地図を見ながら色々と話を伺うことができました。ブログに掲載する許可を頂いたので、ちょっとご紹介してみたいと思います。

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アトリエ77 村松 昭(むらまつ あきら)
1940年、千葉県市川市に生まれる。
都立立川高校卒業後、桑沢デザイン研究所などでデザイン、油絵、リトグラフ(石版画)を学び、そのかたわら1972年頃より絵地図、鳥瞰図(ちょうかんず)を作りはじめる。現在は東京都府中市に在住。
via: Atelier77 村松昭 絵地図の世界 =TOP= of アトリエ77 村松昭 絵地図の世界

アトリエ内に飾られている絵地図は、全て村松さんによる水彩のイラストが元になっているそうです。主に山と川の絵地図が中心で、山の地図はその多くが約90×60cmという大きなサイズのもの(原画はさらに大きなサイズで描いているそうです)。参考までに一般的な国土地理院の2万5千分1地形図のサイズが46×58cmです。

さらに掛け軸のように下がっている川の地図は、幅20cmに対して長さが300cm(3m!)というまるで絵巻物のような作品です。

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それぞれの絵地図は所謂「鳥瞰図」(文字通り鳥が上空から俯瞰したような視点で、斜めに見下ろした図法)で描かれていて、縮尺やランドマークなどはデフォルメされつつも、独特のリアリティを併せ持つ楽しい絵地図になっています。驚くべくはその細かな書き込みの量!

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どの地図も普通の平面地図をただ鳥瞰図に起こしただけでなく、実際に現地に足を運ばないと分からないような様々な情報が事細かに盛り込まれています。

村松さんによると1枚の地図を描き上げるために、現地に赴いての取材やスケッチなども含め1年近くかかっているそうです。

個人的に馴染みの深い奥多摩や高尾、秩父、富士山から富士五湖や外輪山の山々まで含んだ地図もあり、食い入るように見てしまいました。

私が「登山をやってるんですよ」と話すと村松さんが見せてくれたのが「南アルプス鳥瞰絵図」。「全てに登った訳ではないですよ」と仰ってましたが、あの広大な南アルプスエリアを1枚の絵地図にまとめるご苦労を考えたら、それはもう気の遠くなるような作業だったことでしょう(2016年作と新しい作品のよう)。

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南アルプス鳥瞰絵図 ([バラエティ])

南アルプス鳥瞰絵図 ([バラエティ])

また、例えば今回購入してきた「秩父・奥武蔵散策絵図」を見ると初版は1984年になっていますが、2015年に最新の改訂が入っています。そんなこともあり、冒頭で紹介したように1998年竣工の浦山ダムや2008年竣工の滝沢ダムもちゃんと描かれているのです。

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「荒川・隅田川散策絵図」でもやはり東京スカイツリー完成時には、当然書き足すことになったのだとか。「元々何もなかい場所なので書き足しやすかったですよ」と仰ってました(笑)。
ちなみに現在は新規の地図製作はお休み中とのこと。とても大変な作業なのだと思いますが、村松さんが描く八ヶ岳エリアの地図なんてぜひ見てみたくなりました。

現在入手できる作品の目録がこちらで、山の絵図が7点、川の絵地図が9点、その他屋久島や北陸新幹線など4種類、さらに偕成社から出版されている絵本「日本の川」シリーズが7冊あります。

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この絵本がまた素敵で「ちくまがわ・しなのがわ」は水源である甲武信ヶ岳から始まり、ページをめくっていくと槍ヶ岳水源の梓川が犀川と名前を変えて千曲川に合流、新潟県に入り遂に信濃川に流れを変えて日本海に注ぐまでが、横位置のイラストで描かれています。こちらも気になるものばかりなので、欲しくなってしまいました……。

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日本の川 たまがわ

日本の川 たまがわ

ちくまがわ・しなのがわ (日本の川)

ちくまがわ・しなのがわ (日本の川)

それぞれの絵地図の詳細はぜひアトリエ77に足を運んで見て頂きたいのですが、今回私が購入してきた絵図の中から少しだけ雰囲気をご紹介します。

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商品パッケージは山と高原地図よりも少し縦長な程度で意外にコンパクト

「秩父・奥武蔵散策絵図」

魅力的な山地図の中から今回選んで買って来たのは「秩父・奥武蔵散策絵図」。奥秩父山塊の上に(つまり西が上)下(東)は飯能〜越生〜寄居。南(左)は雲取山や奥多摩〜青梅といった東京の端、北(右)は神流町あたりまでの範囲を絵地図化したもの。

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アトリエ77の外からよく見える場所にもディスプレイされています

山や川、峠の名前から公園や観光のランドマーク、秩父エリアでは「夜まつり」や「龍勢まつり」といった祭りの名前も書き込まれています。

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他にもみかん栽培の北限とされる寄居の風布や……

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私の好きな旧大滝村の滝沢ダムに二瀬ダム(アーチ式に描いて欲しかったなあ ←)、以前から名前が気になっていた「芋掘ドッケン」の名前を見つけて嬉しくなってしまいました。

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ちなみに秩父育ちのうちの妻は地元夜祭りの日程が書き込まれていることに喜びつつ、「秩父鉄道は4両編成でない」などとツッコミを入れておりました……(笑)

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前回の記事でお届けした奥秩父の雁坂峠に雁坂嶺、よく見ると雁坂小屋もありますね!

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……なんてことを見始めると止まらなくなる遊び心満載の地図なので、これは秩父の義父、義母にプレゼントしようかなと買ってまいりました(と言いつつ開けて見まくってる)。

念のためですがこの地図は登山地図ではないので、登山のガイドとしては用いませぬよう。もちろん山が好きな人が見る分にはめちゃくちゃ楽しめます。

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「多摩川散策絵図」

そして20cm×3mの多摩川全流域の絵地図。源流の笠取山から小河内ダム(奥多摩湖)を経て秋川等の支流と合流しながら、羽田と浮島を両岸とする河口で東京湾へと注ぐまでの138kmが1枚に繋がった絵巻は圧巻!

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奥多摩の渓谷エリアかかる橋、何気に秋川、北秋川も源流部から描かれているサービスっぷり、流域に住む動物から史跡まで、より実用性の高い文字通りに「散策地図」の色が強い作品になってます。

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府中市民としてはやはり地元である是政橋周辺だったり、個人的に毎年桜を楽しみにしている二ヶ領用水、もちろん多摩川台古墳群だってあります。

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「はけ」とも呼ばれる河岸段丘もしっかり描かれています。

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極めつけはガス橋付近に懐かしの「タマちゃん(2002年8月)」の姿(笑)

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「手塚ワールド(計画断念)」なんて知らなかったな……。

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村松さんによると「山はもう登れないけど」という世代の方が、この散策絵図を手に羽田から奥多摩までを数度に分けて歩かれたりしているそう。確かに下手なガイドブックよりもデフォルメされたイラストで興味や想像力をかき立てられて、この絵地図を見ていると実際に現地を歩いてみたくなります。

この川絵図にはメジャーな大河の他に「玉川上水」や「野川」なんて渋いセレクトもあって、これらを片手に現地を散策するのは普通にやってみたいかも……。

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多摩川散策絵図―源流から河口まで (村松昭散策絵図シリーズ (4))

多摩川散策絵図―源流から河口まで (村松昭散策絵図シリーズ (4))

村松昭 散策絵図シリーズ13 野川散策絵図 (村松昭 散策絵図シリーズ)

村松昭 散策絵図シリーズ13 野川散策絵図 (村松昭 散策絵図シリーズ)

地図を手に想像を広げ、街を野を歩く楽しみ

私自身は登山を趣味にしていることもあって、今も紙の地図とはそれなりに縁がありますが(現地では紙地図よりGPSマップを見ることばかりですけども)、道路地図はほぼカーナビに置き換わっていますし、外を歩く際に参照する地図はスマホのGoogleMapのみ。
スマホがあれば、どんな知らない街に行っても安心ですし、ルートナビや最新情報の更新速度など紙地図時代ではありえないぐらい便利になりました。

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しかしながら今回出会った村松さんの散策絵図は、そんな便利で正確な地図とはまた違う、散策の楽しさを久々に思い出させてくれました。
細かい道や最短のルートが載っている訳ではありませんが、イラストをヒントに季節の花や鳥を探して歩いたりたり、今まで気付かなかった史跡との出会いを楽しんでみたり、普段の登山とはまた違う街や野歩きをしてみたくなる地図たちでした。

気になった方は、ぜひ一度村松さんのアトリエ77を訪ねてみてください。
公共交通の最寄りはJRの府中本町駅(徒歩3分)か京王線府中駅(徒歩10分)、アトリエ77の地図も村松さん手書きのものがホームページに掲載されていました(地元民はこれを見ているだけでも楽しくなります)。

via: お問い合わせ of アトリエ77 村松昭 絵地図の世界
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それにしてもなんというラーメンからの囲まれっぷり(笑) 実は現在さらにもう1店舗のラーメンがアトリエを挟んだ府中街道沿いにあったりするのですけども……。

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